◯◯とは
第24回公演『斎藤の咳』
「斎藤」とは、俺の中学校時代の体育の教師だった者なり。
齋藤だったかもしれないし、斉藤だったかもしれない。
「斎藤」の体育の授業は、体を動かせば何をやってもよかった。
今思えば、かなり高度な授業だったと思う…。
「斎藤」とは、ラグビー部の顧問だった者なり。
あの泣き虫先生から、血と涙を引くと、斎藤になる…。
「斎藤」とは、一度俺達の練習試合に高校生と偽り、出場した者なり…。
ここまでくると、負けず嫌いでは済まされない。負けた俺達もどうかと思う。
「斎藤」とは、部員の姉を知らずにナンパした者なり…。
普通気づくだろ、あんな珍しい名字なんだから…。
「斎藤」が、スクラムマシーンを買うと言ってお金を集め購入した。
…ただ、どう見ても手作りにしか見えなかった。…木製って…。
「斎藤」とは、「マサ」というあだ名で呼ばれていた者なり。
確かに「ヒロ」ではなく、「マサ」の方が良く似合う。
「斎藤」とは、すぐ手が出る者なり。体罰ではない、すぐ手が出るのである。
ある意味体罰よりたちが悪いが、なぜか体罰より許せる。
数学科の竹本と不仲だった「斎藤」。曰く「サインコサインが将来何の役に立つんじゃ!」
…それを言い出したらきりがないし、少なくとも生徒側の台詞である。
理科の疋田と不仲だった「斎藤」。曰く「フレミングの法則で事故が減んのか!」
…いやいや、そういうことではない。
歴史科の安藤と不仲だった「斎藤」。曰く「この国は歴史を学んでこの様か!」
…いやいや、うん…なんか、うん…安倍に言うてくれ。
ラグビーの試合中、スタンドから送られる「斎藤」のブロックサインは、
長嶋の「代打川合」より分かり易かった。
「河川敷で相手を川に突き落とす、バトルロワイヤル」…「斎藤」が大好きな無意味な練習…。
「河川敷から、他校の女生徒のスカートを覗く」…「斎藤」に命じられた不可解な練習…。
教育者として、「斎藤」よりも尾木ママの方が、言っていることもやっていることも圧倒的に正しい。…が、斎藤の方が人として育つ気がする。…圧倒的に。
つまり「斎藤の咳」とは、ペンは剣よりも強いが、拳よりも弱いことの例えなり。
…ただ、残念なことに、拳は剣よりも弱い…。