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次の12の言葉を全て使って、恋愛(官能)小説を書いて下さい。(初級)

 

「ザリガニ、ラジオ体操、アンパンマン、卑弥呼、君が代、
オセロ、手裏剣、新幹線、輪ゴム、盲腸、ピラミッド、妖精」

『無理矢理のように、ザリガニでストッキングを引き裂かれて』

  私のことを「輪ゴム妖精さん」と呼んでいた元彼。
  ラジオ体操のような正確さで、毎回同じ手順をふみ、私のことを舐め回すのが大好きだった。
  手裏剣のようにとがった舌先で、盲腸のキズあとからスタートして時計回りにネットリした愛撫。
  今でも思い出すだけで私のピラミッドは熱くなる。
  行為のあと、いつもアンパンマンのモノマネで歌ってくれた「君が代」が耳から離れない。
  彼との思い出はまるで角をとられたオセロ盤。
  彼が「東北新幹線 卑弥呼」と呼んでいた私の秘密の性感帯。
  知っているのはあの人だけ。

  私は今新幹線の中でこの手紙を書いています。思い出が次々と蘇って私を困らせたり、ドキドキさせたり…。でもこの手紙を、あの場所であなたに今日渡せることの喜びに浸りながら一生懸命書いています。
  初めてあなたに出会ったのは、小学六年の夏休みでしたね。初対面の私の目の前にあなたはいきなりザリガニを投げ付けてきましたね。驚いて何も言えない私を見て、あなたは高笑いし、明日からラジオ体操絶対来いよ、と言い放ちましたね。でも内心、私は嬉しかったんです。初めての土地で、どうしようかと途方にくれていたところに、ザリガニの一撃。あのザリガニの一撃で私の心はすでに、あなたに射抜かれていたのかもしれません。
  あなたのあだ名が「卑弥呼様」だと知った時、私は妙に納得しました。あなたには、何か人を惹き付ける魔力のようなものがあると幼な心に思っていたのです。
  あなたと私は、家が近かったこともあり、毎日のように遊びましたね。裏山での妖精ごっこは今でも忘れられません。なぜ私が全裸になり、葉っぱを頭からかぶらなければならなかったのか…。でも、あなたのはじけるような笑顔を見ていると、そんなものどうでもよくなりました。
  私たちはよくオセロコンビとも言われましたね。あんなに毎日外で遊んでいたのに、私は真っ白、逆にあなたは冬になっても真っ黒でしたね。地黒だったのか…と大人になった今はわかります。
  私が盲腸で入院した時、あなたはお見舞いに来てくれましたね。アンパンマンのお面をかぶり、君が代を歌いながら、手裏剣の形に折ったお手紙を持って病室に入ってきましたね。私の両親はとても驚いていましたが、私にはあなたの照れ隠しだと分かりました。なぜなら、アンパンマンの奥の顔が真っ赤だったからです。あの時のザリガニのように。
  あの時、いや初対面の時から、私はあなた、卑弥呼様の恋の奴隷になりました。
  高校の卒業式の日、ピラミッド公園で、輪ゴムの指輪をあなたの薬指にはめましたね。あなたはまたアンパンマンのお面をかぶってきましたが、私にはそれがあなたの返事だと分かりました。
  そして今日、あなたに本物の指輪を渡したいと思っています。ピラミッド公園に、あなたはきっとまたアンパンマンのお面をかぶって現れるんでしょうか。
  今からこの手紙を、手裏剣の形に折りたいと思います。不器用な私に出来るでしょうか。

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