ベトナムからの笑い声 アーカイブ
Laughing Voice form Vietnam Archive
第6回公演『バルバロマン』
ベトナム最大人数で望んだ、初の「エログロ・ナンセンス」コメディ。この時より、作・黒川、演出・ジラフ教授に固定。第2回公演以来となる宮崎宏康が本格的に参加。彼の造りだす造形作品のような衣装が脚本に多大な影響を与えるようになる。同時に宮崎宏康の特殊髪型の歴史始まる。口コミで観客が1.5倍に増えた出世作。
Data
日時 1998.11.6.(Fri.)―8.(Sun.) 4ステージ
会場 スペース・イサン東福寺(京都)
クレジット
作/黒川猛
演出/ジラフ教授
照明・音響(OP)/山下衣子
衣装/宮崎宏康
制作/丸井重樹
出演
東りゅう介(不乱犬)/黒川猛
上田治(ドラキュラ伯爵)/ジラフ教授
太田光仁(魔黒 他)/高木俊輔
阿部順子(剣道娘)/東川原菜緒
袴田剛(新オーナー)/徳永勝則
常盤平(秘書)/鈴木芳 *鈴木さん俳優デビュー
築備晴太(バルバロマン)/宮崎宏康
料金 前売600円 当日800円
観客動員 約270人
design Shigeki MARUI
Photo(準備中)
Details
大正四年から続くお化け屋敷「田楽」。
が、経営不振のため、遊園地「エスエスパーク」によって買収。
規模も縮小され、現在は「エスエスパーク」内のアトラクションの一つとして営業していた。
オーナーは田楽茂吉、一一九歳。長年の苦労と徒労がたたり、現在入院中。
そこに現れる、“新オーナー”を名乗る男。
赤字続きの「田楽」に、リストラの嵐が吹き荒れる。首になるのは一体誰か。
キリスト教徒のドラキュラか、
毛むくじゃらのフランケンか、
剣道着に身を包む剣道娘か、
一人で五つのお化けをかけもちする新入りか、それとも…
お化けたちの運命は、「田楽」の運命は、そして、
バルバロマンとはいったい何か。
ベトナム最大人数で送る、
下品で下世話で、アブノーマルな、エログロ・ナンセンス・コメディ。
Director's note
何事にも境界というのはある。
あの世とこの世の境界とか、国と国の境界とか、学生と社会人の境界とか。
日常と非日常の境目とか、友達と恋人の境目とか、劇団と演劇部の境目とか。
人のやることは数学や科学と違って、境界線を引くことが難しい。境界線を引くことが出来たとしても、どっちにつくかを決めるのはやっぱり人で、これまたややこしい。国と国の境界線を引くには何万人もの人の命を犠牲にしてきたし、今日まで彼女、明日からは友達、なんて線を引くことは不可能だ。だいたい、その境界線が細い一本の線であることはまずない。境目にはニュートラルゾーンがあって、人はそこをうろうろしている時間のほうが長いのかもしれない。そして、たいがい「どっちやねん、はっきりしろよ」ってことになる。しかし。
そこに安住しようとする人は別として、僕らがもがき、苦しみ、悩んだりして、前に進もうとするのは、このニュートラルゾーンにいる時だ。もっと言えば、新しいものというのは、このニュートラルゾーンから生まれてくる。新しい価値観、新しい関係、新しいジャンル、すべては、このどちらでもないニュートラルなところで、どちらでもないというしっかりとした線を引くことで生まれてくる。
今回のテーマは「境界線」。お化け屋敷と、その外との境界線上を舞台に、人間とお化けの境界、お化けとお化けの境界、お化けと宇宙人の境界とは、ノーセンスとナンセンス、笑いと引きの境目とは、そして、演劇とコントの境界線を驀進するベトナムが模索する、「演劇」の境界とは何か。
今日はどうもありがとう。最後までごゆっくりとお楽しみください。
ベトナムからの笑い声 代表 丸井重樹
(1998年11月)
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