ベトナムからの笑い声 アーカイブ
Laughing Voice form Vietnam Archive
design Shigeki MARUI
Photo(準備中)
第13回公演『バッドブザー』
久しぶりの単独自主公演。久し振りのオムニバス公演。久し振りの出演となる川口真理を客演に迎える。そして久し振りのホームグラウンド=スペースイサン東福寺での公演。異様なまでに盛り上がるわけのわからない闘争心と、抜群の居心地の良さで迎えた第13回公演は、第三期ベトナムのスタートを飾るにふさわしく、女優・東川原菜緒を失い、宮崎宏康の特殊美術を封印して挑む、新しい地平への挑戦。「レッドマザー」を彷彿とさせる気持ち悪い間、ぬるーい空気、破壊的な結末。話の間に挿入されるスライド、予想以上に威力を発揮した五木見名子の"中道具"たちと、収穫も多かったが、そこは転換期、いろいろと考えさせられた公演となった。次回、第14回公演をもって、第三期への移行は完成する…のだろうか。
Data
2002.7.13.(Sat.)・14.(Sun.) 4ステージ
スペース・イサン東福寺(京都)
クレジット
作/黒川猛
演出/ジラフ教授
舞台監督・舞台美術/五木見名子
音楽・映像/信國恵太
衣装協力/信原典子
音響/小早川保隆(GEKKEN staff room)
照明OP/岡野真大(kbzoffice)
制作/丸井重樹
制作助手/山方由美
出演
川口真理(フリー)
黒川猛
徳永勝則
堀江洋一
宮崎宏康
京都芸術センター制作支援事業
料金 800円 当日1,000円
観客動員 約320人
Details
今回はオムニバス公演
数々の作品に多大なインパクトを与えてきた宮崎宏康の創る
”身につけられる現代美術”=特殊衣装を封印
一つの場所に次々と現れる人々によって加速度的に混乱する
スピードと勢い重視の得意のスタイルを封印
濃密なキャラクターと濃密な間
黒い、高い、シュールな笑い
長編になれなかった強力なネタの中から厳選
脚本家・黒川猛の小宇宙です
ベトナム得意の短距離走です
いつも以上に耳をすましてください
何も考えず、いや、想像力を最大限働かせながら
ついてきて下さい
果たして舞台上で行われる世界の妄想を
観客の想像力は越えることができるか
約2年ぶりのホーム・グラウンド=スペース・イサン東福寺
わけのわからない闘争心と、リラックスムードで
みたことのない価値観と
これまでとは一味違う、ベトナム流コメディを
乞うご期待
ACT1 天狗と河童と俺?
河童×天狗の話。昔話でもお伽噺でも、ましてやファンタジーなんかではない。
ACT2 マゾヒスティックバイオレンス
私たちは何かというと”どちらか”に分類しがちだが、しかし世界は、それほど単純ではない。男と女、正義と悪、……。
ACT3 アポロジー
ごめんなさい。
ACT4 テイルエンド
この世の中に”正常”なんてありえない。
ACT5 劇団ワイフカンパニー in フラメンコ
世界的に有名な演出家、不破英二。情熱の国・スペイン帰りだ。今日も彼の元で厳しく激しい練習が行われる。
Director's note
例えばうちの劇団員は遅刻がものすごい多い。
時間どおりに事が始まったことがない。しかも、よほどのことがない限り、めったにみんな怒らないし、本人もそれほど謝らない。「遅くなりました」「おう」で終わりだ。どうしてか。自分も遅刻するから他人のことをとやかく言えない。腹を立てたまま練習が出来ない。稽古場の雰囲気が殺気立っていたり、イライラしていたり、重い暗い空気ではコメディの練習なんてできない。そして、遅れてきた分は、そいつが自分で何とか取り戻すやろって思ってるから。そいつにとってはそれが精一杯なんやろって思っているから。お互いに個人を尊重し、かつ信頼している。そうでなきゃ一緒に仕事なんて出来ないし、作品なんて創れない。仕事なんかでしんどいのは、明らかに「こいつは精一杯じゃない」って思う人とも一緒にやらなきゃいけない点だ。
うちの劇団員の遅刻についてだった。
きっと、寛容だからなんだと思う。たいていのことは「まあええか」と思えるからなんだと思う。もちろん、「まあええか」ですまされないことは一杯ある。あるけど、「まあええか」なのだ。人はみんな違ってて、それぞれ異なる価値観で生きている。他人同士が完全に分かり合うなんてことはまずない。たとえ親でも兄弟でも、夫婦でも恋人でも。まして、劇団員同士の価値観が同じなわけがない。そんな中でどうやって信頼関係を作り出すのか。作品の方向性や、劇団の方向性などでお互いがお互いの価値観をぶつけ合い、すり寄せを行うことはあっても、基本的には、お互いがお互いの価値観を理解しようとする寛容さが必要になる。「なんであいつはこうじゃないの」「なんであの人はこうしないの」だけではなく、「あいつにとってはそうなのか」「あの人にとってはそうなんだ」って。「まあええか」って。
僕はこの寛容さを「思いやり」だと思っている(「優しさ」とはちょっと違う)。「思いやる」ことなしに、信頼は得られない。子供の頃、母親にさんざ言われた言葉「思いやりのある人になれ、相手のことを考えろ、人の嫌がることはするな」。自分の価値観だけで生きていくことなんてできない。世の中は、自分以外他人で、全く同じ価値観を持った人なんていないのだから。
今日はどうもありがとう。最後まで、どうぞごゆっくりご覧下さい。
ベトナムからの笑い声 丸井重樹
(2002年7月)
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