top of page

design Shigeki MARUI

Photo(準備中)

第16回公演『G・H・Q』

ほぼ定着しつつあるオムニバス形式での公演。

作家・黒川のセンスは留まることを知らず。史上最高シュール作品「第六師団」は、そのぬるさ・ダルさで賛否両論。最大級の実験と思われた初のラブ・ストーリーもの「夏恋」は、予想以上の好評で迎えられる。

今回より演出家を固定せず、全員創作体制へ移行する試みを始めた。また信國は音楽に専念することとなった。チケット代が1,000円より1,500円へ高騰。より、完成度と強度を求められる公演となり、作品そのものというよりも、作品を創作する環境や意識、制作体制を劇団として考え直すきっかけとなる。

Data

2004.7.24.(Sat.)―25.(Sun.) 4ステージ

スペース・イサン(京都)

クレジット

作/黒川猛

舞台監督/五木見名子(GEKKEN staff room) 
特殊美術/宮崎宏康 

音楽/Nov.16 
照明/高原文江(フリー)

音響/小早川保隆(GEKKEN Staff room)

イラスト/中川剛

衣装協力/信原典子 
制作/丸井重樹 

 

出演

黒川猛 
ジラフ教授

新海大祐(元京都教育大学野球部投手)

徳永勝則 
堀江洋一

松村康右(よしもと ザ・ブロードキャストショウ)

宮崎宏康

山方由美 (フリー) 

声の出演
中川剛
高木俊輔
Nov.16
小早川保隆
芝秀行

京都芸術センター制作支援事業

スペース・イサン協力公演

料金  1,500円 日時指定割引1,200円

観客動員  約360人

Details

今回は、「悪の組織」の闘いを描く四本。
世界征服という大義の下、次々送り込まれる“怪人”たち。
劣勢の日々は続き、定例の幹部会総会では、とっておきの秘策が。
一方、いつも泥をかぶる現場では、恋の花が咲き、
“怪人”たちには、本来人間には言えない悩みがあった。

第13回公演より定着したオムニバス形式。
恒例となりつつある二人芝居のACT1から始まり、
本編ともいえるメインのACT2、実験的手法のACT3、
お馴染みとなったシリーズのACT4。

果たして「悪の組織」の野望は叶うのか。

ACT 1 安藤博士と伴教授
悪の組織の博士と教授。
怪人開発室。果たして怪人はどのように創られるのか。

最強の怪人を作り出すための悪戦苦闘。

どこまで本気なのか。どこまでも本気なのか。

「怪人って言うか…外人やん…」
ベトナム恒例、黒川猛と堀江洋一の二人芝居・第三弾。


ACT 2 第六師団
悪の組織の幹部会総会。
上半期の定例総会。

世界征服という野望叶わず、劣勢の日々。

長引く会議。意味のない雄叫び。野望達成のための秘策とは。

「…一同、起立!」
壮大なスケールで描く、ベトナム史上、アントニオ・シュール。


ACT 3 夏恋~季節外れの林檎と夏蜜柑~
悪の組織の恋物語。
戦闘員たちの切ないラブストーリー。

黒紙が来て闘いに行く男。別れを惜しむ女。

その女に想いを寄せる男。その男に想いを寄せる男。

その男に…。

「…八歳のあなたは米原で何を考えていたの」
作家・黒川が初めて描く、ベトナム史上初のラブ・ストーリー。


ACT 4 恐怖!怪人ダルマ男爵現る
悪の組織の怪人たち。
人でもない、動物でもない、もちろん妖怪でもない。

人の手によって作られる怪人たちには、怪人なりの悩みがあった。

「…ご決断を!」
どこかで見たような展開、ベトナム最強のドタバタ・バイオレンス。

---from flyer text

ベトナムからの笑い声です。京都を拠点に活動する劇団です。
1996年の旗揚げ以来、15回公演。現在劇団員6名。
テーマは「笑い」。手段としての笑いでなく、目的が笑い。
ただ単に笑える。そのためには手段も方向性も選ばない。
鋭い視点と独特の言語感覚を持つ脚本家と、
あくの強いキャラクターを演じる役者とがでっち上げる世界。
演劇とコントの境界線上を驀進。

半年振りのベトナムからの笑い声・第16回公演
「悪の組織」の闘いを描くオムニバス四本
シュール度と黒さ増大
果たして客席は笑えるのか
今回よりチケットの値段が高騰
責任を取るべく脚本家と役者も奮闘

これまでに観たことがない「笑い」。
ベトナムでしか見られない「笑い」。
演劇だからこそ生きる「笑い」。
わざわざ観に来る意味のある「笑い」。

どこにもない 騒がしい 無意味
ただ単に笑える ベトナム流コメディ。

---Key word

■GHQ
General Headquarters の略。総司令部。

もちろん、思い出すのは太平洋戦争終了後に日本にやって来た、かのM元帥だろうけど、今回のお芝居とどのように関係しているかは、見てのお楽しみ。
それよりも、これまでカタカナ一辺倒でやって来たベトナムのタイトルだったが、ここに来て初めてアルファベットに。過去に「ダルマカップ87」と、数字に逃げたこともあって、カタカナの呪縛から逃れる口実があったこともあるけど、事実、これよりインパクトのあるカタカナが思いつかなかった。
旗揚げから思い出してみる。バイ・マイセルフ、タイガーマスク、グランドマスター、ドッグ・オア・ジャック、ドクターセブン、バルバロマン、ドッグ・オア・ジャック-改訂版-、ダルマカップ87、レッドマザー、モロッコ、ザ・サウナスターズ、ハヤシスタイル、バッドブザー、ゴッドバザー、ベトナリズム。

…どれだけ、タイトルに意味があっただろう。第8回ぐらいまでだなあ。おそらく。

特にオムニバス公演になってからは、全体のタイトルにはほとんど意味がない。

 

■恒例の二人芝居
始まりは、「ゴッドバザー」の「まんが坂」。

この時は、“のじらじお”という漫画家コンビの不条理芝居だった。

流れるラジオとの競演と、のじくん(堀江)の強烈なキャラクターがなぜか大人気。「~だよね」という語尾が一部で流行ったりした。演出的には、もっと不条理な間や、気持ち悪い空気を創り出したかったのだけど。
ちなみに今回のACT2に出てくるあるキャラクターは、「まんが坂」のラジオに登場したキャラクターだったりする。
二人芝居・第二弾が、前回公演の「もっこり係長」。「もっこりかかりちょお」という独特の歌が一部で流行ったりしたが、客席は沸かず、黒川と堀江は“紙袋”と“SEX”という単語に対してトラウマとなる。後で聞いたら、げらげら笑うようなネタではなかっただけで、けっこう受けていたようなんだけど、今回の二人芝居は、二人にとって“リベンジ”マッチと位置づけられている。

■ラブ・ストーリー
ACT3は初のラブストーリー。
ラブストーリーといえば、現在話題の「冬のソナタ」。見ているとイライラする。この間見た回では、10年付き合った婚約者に振られた男が、仕事をやめ、食べることもやめて、入院してしまい、振った女が病院に見舞いに来て、よりを戻すという、驚愕の展開が繰り広げられていた。軽い脅迫やん、それ。
あれだけ熱烈な恋愛を描いているのに、キス・シーンすらほとんど出てこないのは、韓国のお国柄だろうか。抱き合うので精一杯。ものすごい時間見つめあったりする。昔、宮崎駿が「母を訪ねて三千里」でマルコとフィオリーナが見つめあってて、でもキスするわけに行かなくて、気持ち悪いので、手をとってぐるぐる回らせたって言ってた。男と女があれほど熱い視線で見つめあえば、そしてそれがいい年の大人なら、チュウぐらいするだろうって。ただ、最近の日本のドラマは、好きになったらすぐに寝ちゃうのも確か。
閑話休題。
黒川がどれほど「冬のソナタ」に影響を受けたのかは知らんけど、「冬のソナタ」に負けず劣らず、熱い熱い恋愛模様が描かれる。…どのように熱いのか。それをどのように料理するのかは、見てのお楽しみ。

 

■客演
今回も、山方さんが客演で出演する。
制作補でベトナムに関わることになったのだが、「ゴッドバザー」で役者として出演することを承諾してしまい、成り行きで「ベトナリズム」にも出演。第10回公演からベトナムに関わっているだけあって、空気を理解するのにさほど時間はかからなかった。今回からは、制作補ではなく、純粋に役者として出演する。
そして、第7回公演以来の出演となるのが、松村康右。
堀江と同期で、丸井・宮崎・黒川にとっては大学の後輩。てっきり大学を出た後はお芝居なんかやめていると思っていたら、大阪で演劇を続けているという。しかも、「よしもと ザ・ブロードキャストショウ」という、吉本興業が手がける俳優の養成所のようなところに入っているというので、今回ベトナムに誘ってみた。僕らはこれを機に、ベトナムの劇団員になればいいと思っているんだけど、そうもいかんのだろうか。

 

■演出家
今回は、「演出」というクレジットを無くした。
前回までは、「演出/ジラフ教授」というクレジットで、丸井が演出ということになっていたが、今回からはメンバー全員で演出の役割を担うことになった。もともと、丸井は本来演出家がするような仕事はほとんどしていなくて、演出家が行う一部の作業、交通整理的な仕事だけをやっていた。作品の世界観を創ったり、方向性を統括したり、空気やディテールにこだわったりは、作家の黒川を中心に、出演する役者たちが稽古場で創っていく。劇団員一人一人の責任を少しずつ重くして、全員で共同創作する。

 

■チケット代
何より最大の変化は、チケット代が1,000円を超えたことだ。
これまで、800円/1,000円でやってきたのだが、さすがに経済的に苦しくなってきた。

外からどんなに「安すぎる」と言われようと、この価値観は変えるつもりもなかったのだけど、毎回アンケートで聞いている「今回の公演は安いと思いますか/高いと思いますか」のアンケートの比率なども考慮して、思い切って1,500円にしてみた。…映画よりはまだ安いでしょ。

これまで以上に、完成度の高いものを見せるぞ、という意気込みでもあるとご理解ください。

Producer's note

プロフェッショナルについて考える。

ここで言うプロとは、お金をもらえるほどの責任と技術を伴う仕事をすること。単にお金をもらえればみんなプロというわけでもない。そこにはプロとしての意識が不可欠となる。小劇場の世界ではそこがとても曖昧で、現場ではプロについての話をすることが度々ある。

 

プロの基準って何?

技術、意識、それに伴うお金。ベトナムも、旗揚げ公演からお金を取って公演している。今回、その料金を大幅に上げた。果たして、お金に見合った作品を提供できているのか。「プロ」として。ベトナムの役者たちは、全員仕事を持っている。社会人劇団だ。つまり、いわゆる「プロ」の役者ではない。彼らの役者としての技術に対して、それに見合うお金は支払われていない。…もちろん、そんなことが出来ている小劇場の劇団はほとんどないんだけど。でも「プロ意識」はもたないと、「プロ」としての作品を提供できない。

今回、もう一つ変わったことは、作品を司る"演出家"を一人に決めず、全員が作品に対して責任を持つ。一人一人のメンバーに「プロ意識」を求めたことになる。

 

プロの基準って何?

具体的なことをいい始めるときりがない。特に役者の「プロ意識」なんて非常に抽象的な話だ。ただ、当たり前かもしれないけど「普通は不可能なことが、普通にできる」っていうのはあるなあと思う。全員仕事を持っていて、週に一回集まれるかどうか微妙な状況で芝居を創るなんてことが、もちろん、面白い芝居を創れるなんてことが、きっと普通できない。ベトナムではそれができる。それがきっと劇団の「プロ」としての価値かなあと思う。

 

本日はご来場いただきまして、本当にありがとうございます。
「プロ」としての作品か否か、最後までごゆっくりお楽しみください。


ベトナムからの笑い声  丸井重樹
(2004年7月)

PREVIOUS Stage

NEXT Stage

bottom of page