top of page

design Shigeki MARUI

Photo(準備中)

第17回公演『643ダブルプレー』

本公演では初の再演となる「まんが坂2004」を手始めに、全編、黒川猛と堀江洋一の二人芝居。(一本は“ラジオドラマ”。舞台上は無人、収録したラジオドラマ(第二話)をただ流すという実験的試みを行った。)その他、「笑えない笑いを笑う」という、究極の笑いへの挑戦となった「元チャンネル団地」、ハイリスク・ノーリターンの割りにそこそこ受けた「官能小説を書き続ける男?」、そしてベトナム節炸裂のドタバタ「魔法少女チヅコ」と、二人しか出ないのに5本もやってかなり疲れる。もうしばらく二人芝居はいいし、オムニバスもいったんお休みで、次回は満を持して長編作品に取り組む。…らしい。
ところで、制作のミスがたたり、5ステージもやったのに動員が300人を切り、かなりへこむ。出来も動員に比例して安定せず、いろいろと反省。ネタは面白かったし、こんな濃いベトナムは二度と見れないのになあ。残念。

Data

2004.11.20.(Sat.),21.(Sun.),23.(Mon.) 5ステージ
アトリエ劇研(京都)

クレジット

脚本/黒川猛

舞台監督/小島聡太
音楽/Nov.16 
音響/小早川保隆(GEKKEN staff room) 
照明/芝秀行

衣装協力/信原典子 
制作/丸井重樹 

 

出演

黒川猛 
堀江洋一 
 

声の出演

太田清伸(売込隊ビーム)
北岡啓孝(劇団●太陽族)
ジラフ教授 
新海大祐(元京都教育大学野球部投手)
徳永勝則 
Nov.16
堀江洋一
前田岳志(バンド“岩本天王”キーボード)
前田由香子(劇団●太陽族)
宮崎宏康
山方由美(フリー)

京都芸術センター制作支援事業

アトリエ劇研協力公演

料金  1,500円  日時指定割引1,200円

観客動員  約280人

Details

今回は、二人芝居の限界に挑戦。
「まんが坂」再演に始まり、ラジオドラマの放送、究極の「笑い」への挑戦、ハイリスク・ノーリターンで勝負する「笑い」、過去1、2位を争うトップスピードで疾走する「笑い」。

 

もはやコント? 演劇とコントの境界線上を驀進するベトナムの作品も、今回ばかりは、若干メーターを振り切りぎみ。

これでもかと繰り出す、脚本家・黒川猛の変化球、ストレート、魔球。
こともなげに打ち返す役者・堀江洋一と、跳ね返す役者・黒川猛。

 

「笑い」へのあくなき挑戦は続き、
ベトナムの妄想は、観客のはるか頭上を漂う。

ベトナムの作る演劇は、「想像力」の勝負。
私たちの妄想と、観客席の想像が、ある回路で繋がった時、
その威力を発揮します。
ついてきて下さいね。

 

上演時間は、約100分。
途中休憩はございません。
最後までごゆっくりお楽しみください。

ACT1 まんが坂2004

新人マンガ家の部屋。二人はコンクールに向けて新作を執筆中。

ラジオからは、妙な番組ばかり流れている。気にしてか知らずか、一向に進まないマンガ。
「エロいよね」
「エロくはないよね」
「エロいよね!」
「でかいよね。のぢくんはエロ発言のとき声が異様にでかいよね」
第14回公演「ゴッドバザー」より始まった、黒川と堀江の二人芝居シリーズ第一弾の再演。

流れてくるラジオと共に、ベトナム史上掟破りの再演・二人芝居。

ACT2 真夜中ラジオドラマ サンデー・イン・マンデー

ラジオから、深夜のラジオドラマが流れている。
真夜中ラジオドラマ サンデー・イン・マンデー「宇宙戦艦 服部」第二話。
舞台上は無人。ラジオドラマを舞台上で特別に放送します。

なお、第三話以降は、カセットテープに録音し、公演会場において順次販売します。

ベトナム史上初のラジオドラマ(二人芝居ではありません)。

ACT3 元チャンネル団地

元お笑いグループ“チャンネル団地”のメンバーが再会するはずだった部屋。リーダーが死に、再びコントを創ることに。
「おもろいんか」
「笑わなしゃあないやろ」
「そんなコント創ろか」
「勝ち目あんのか」
「あるかぁそんなもん」
当時「笑い」の代名詞だったドリフターズ世代のベトナムが挑む、いかりや長介亡き後のドリフターズ。ベトナム史上究極の二人芝居。

ACT4  官能小説を書き続ける男?

ある官能小説家の部屋。黙々と官能小説に向き合う作家。官能とは何か。欲情とは何か。人は何に感じるのか。そもそも何を感じるのか。感じるとはなんなんだ。
「スティックのり……、アゲハ蝶……、ツンドラ気候……」
何かをやり遂げようとする人間は、その他の何もかもをも何かで絡め獲る。

官能小説を書き続ける男の狂気を描く、ベトナム史上最もハイリスク・ノーリターンの一人芝居。

ACT5 魔法少女チヅコ

大学受験を控えた息子の部屋。父と母と姉のごくごく平凡な四人家族。ある夜、父親が部屋に入ってくる。
「父子家庭がよかったなあ」
「何で父さんが言うんだよ」
「父子家庭の方がいろいろあんだよ、純平」
「別になくていいよ」
増え続ける少年犯罪、後を絶たない児童虐待、その原因とも言われる親子のコミュニケーション不足。

それとはまったく関係なく、必死で息子と会話しようとする父親の苦悩を描く、ベトナム史上、いや、いつものドタバタ二人芝居。

---Key words

■643ダブルプレー
来季より、パ・リーグに「楽天イーグルス」が参入することになった。
今年のプロ野球は、どこが優勝するかというよりも、合併を巡るすったもんだばかりが話題に上る結果となった。皮肉にも、そんな年に行われた初めてのプレーオフも、日本シリーズもなかなか内容の濃い、よいポストシーズンだったように思う。作家の黒川は、このごたごた当時より「一リーグ制支持派」だった。しかし、近鉄とオリックスの合併に関しては、生まれたときから近鉄ファンの友人(新海氏:元京都教育大学野球部投手)と「オリックス・バファローズとかいう、中途半端な名前だけは避けて欲しいなあ」とこぼしていて、否定的だったのだけど、まさに最悪の結果となっている。
さて、ベトナムと野球はなかなか縁が深い。野球を題材にした芝居もやっている(第4回・第7回公演「ドッグ・オア・ジャック」)し、芝居の中に頻繁に野球関係のネタが出てくる(八重樫/ドットソン/鉄人衣笠/父が熱狂的なカープファンで、付いた名前が山本浩二、弟は鯉太郎、妹は山本ランス、なのに今は巨人ファン/戦力外通告された横浜の波留 など)。野球に興味がない人には、まったく意味が分からない。今回のタイトルもそうだろう。ちなみに、黒川と丸井は阪神ファン。堀江と徳永は巨人ファン。信國は元野球部。宮崎は球技嫌いである。
この時期に野球のタイトルはタイムリーでいいなあ(もちろん作品の内容とはまったく関係ない。二人芝居で「ダブル」という程度)なんて言ってたら、一足先に「柳川」という劇団が「ツーストライクスリードッグ」というお芝居をやっていた。悔。

■ラジオドラマ
今回より、ベトナムでは新たなプロジェクトが始動する。それが「真夜中ラジオドラマ サンデー・イン・マンデー」。

今回ACT2として放送するラジオドラマ「宇宙戦艦 服部 第二話」は、特別に舞台上で放送されるが、今回の放送分を含めて、今後このラジオドラマはカセットに収録して販売する。今後公演毎に一話づつ販売。七話完結の予定だ。

 

■二人芝居
過去に二人芝居は何回か挑戦している。
旗揚げ公演「バイ・マイセルフ」は、一人芝居・二人芝居・三人芝居で構成されたオムニバス公演だった。初めて上演したのがACT1「犯罪者」だった。これは、今読み返してもなかなか面白い脚本で、手直しすれば黒川と堀江の二人芝居シリーズで再演可能だと思っている。やはり旗揚げ公演で上演したACT2「ナルシスト」が、ベトナム唯一の男と女の二人芝居だ。
今回の公演の源流となった二人芝居は、第14回公演「ゴッドバザー」のACT1「まんが坂」だろう。そう、今回再演する「まんが坂2004」の初演だ。その後、黒川と堀江の二人芝居は「モッコリ係長」「安藤博士と伴教授」と続き、今回でしばらく見納めになるものと思われる。

■ザ・ドリフターズ
黒川と丸井と宮崎は同じ年なのだが、少し上の徳永も、下の信國も堀江も、小学校時代に「8時だヨ!全員集合」を見て育った世代だ。今年(2004年)は、ザ・ドリフターズ結成40周年なのだそうだ。「8時だヨ!全員集合」は1969年にスタートし、1985年まで16年間、803回に渡って放送。視聴率40%や50%など、現在では考えられない数字をたたき出すお化け番組だった。中に下品な笑いも多く含まれたことから、教育上良くないとされ、PTAから番組を見ないよう、親に通達されるところもあった。
どういった形であれ、現在「笑い」をやる人で、ドリフターズの影響を受けていない人はほとんどいないだろう。大掛かりなセットを使ったコント、お決まりのキャラクター、ギャグ、わかりやすい笑い。…しかし、よく考えてみて欲しい。思い出されるのは、いかりや長介、荒井注、志村けん、加藤茶、ばかりではないか。数々のコントにおいて、仲本工事と高木ブーは、果たして何をしていたのだ? 確かにいた。存在はしていた。五人でドリフターズだった。しかし…???
思い出せる人がいたら思い出して欲しい。仲本工事と高木ブーが、体操キャラとデブキャラ以外で輝いていたコントを。

 

■キリン・アート・プロジェクト
今回、宮崎宏康がお休みなのは、「キリン・アート・プロジェクト」への公募締め切りと本番が重なっているためだ。

彼は現代美術の作家であり、舞台での製作や役者活動は、美術活動の一環として行っている。「キリン・アート・プロジェクト」は、「キリン・アートアワード」という現代美術のコンペティションが名称を変更したもので、日本の現代美術界では相当有名な賞なのである。過去、名だたる現代美術家が受賞しているこの賞を獲ることで、現代美術界の階段を10段も100段も一気に駆け上がることができるのだ。…たぶん。

 

■男だらけ
今回の現場には、女の子が一人もいない。
もともと、劇団員は男だけなのだが、女の子が一人も出演しない芝居は、実は今回が初めてだ。かつてベトナムには、山下衣子・東川原菜緒・鈴木芳という女優がいたし、山方さんも第12回公演以降連続して出演している。音響や照明のスタッフも、女の人だったことが多くて、舞台監督の林詩乃さん、音響のまりも舞由さん、照明の新屋未央さん・モリサワメグミさん、などなど、少なくとも劇場に入ったら、女の子が現場にいた。しかし今回は皆無。仕込みの時に女の子が一人手伝いにきたのと、舞台写真を撮ってくれる仲川さんがちょこっと来る以外は男だらけなのである。ちょっと、うざい。
少なくとも、受付には女の子を呼ばなくてはと思っている。

 

■ポワトリン
今回のACT5「魔法少女チヅコ」のモデルとなったのが「美少女仮面ポワトリン」である。
---
いわゆる「東映不思議コメディーシリーズ」の11作目にあたる(因みに、第一作目はロボット8ちゃん、有言実行三姉妹シュシュトリアンまで全部で14作)。その徹底した不条理ギャグの世界は、その後も同シリーズや、「激走戦隊カーレンジャー」などに受け継がれているようだ。主役のポワトリンは、ほとんど冗談のようなデザイン。初めて花島優子(ポワトリン役)が衣装を着けた時、「スカートの丈が長い」という一言でその場でハサミを入れられた、というとんでもないエピソードがあるぐらいだから、いかにノリノリの撮影現場であったかが窺い知れる。(某ホームページより抜粋)
---
それはさておき、今回も衣装を、大学の後輩の信原さんに依頼した。彼女は、家政科出身で、学生の頃から演劇部の衣装を作り続けているのだが、ベトナムの依頼する衣装はろくなものがない。最初は「靴下の着ぐるみ」(ドッグ・オア・ジャック)だったし、「ドラキュラ伯爵のマント」(バルバロマン)、「河童と天狗」(河童と天狗と俺?)「ショッカーのタイツ」(夏恋)などなど。本人は、もう少しまともな衣装を作りたいと思っているようで、「今回はまだましです」と言っていた。しかしこれを女の子が着るのならともかく、黒川が着る。「ほんとに、ベトナムさんは、だんだん見にいけなくなります」。

Producer's note

ベトナムは社会人劇団だ。
児童館職員、コンピュータ会社社員、私立中学・高校教諭、ホテルのフロントマン、そして今年教員採用試験に合格し、晴れて小学校教諭となるメンバーと、「演劇制作者」と自称する自由業の代表からなる。
「演劇制作者」を自称する代表はどんな仕事をしているのか。例えば、大阪ミナミに新しく開場した「精華小劇場」の事務局の担当者として、事務局をまとめたり、劇場の運営の仕組みを考えたり、目指す方向性を実現するための工夫をしたりしている。例えば、京都市の文化施設・京都芸術センターの演劇事業「演劇計画」の企画を共同で担当し、演出家をクローズアップした演劇作品を製作している。例えば、東山青少年活動センターという施設で、演劇創作の手法を使った青少年育成の事業「演劇ビギナーズユニット」の企画を担当し、講師の選定からスケジュールの調整などのプロデュースを行っている。

実はそれらの仕事は、ベトナムの活動の真逆を行く。
「精華小劇場」では、劇場を二週間使って、演劇作品を完成させるためにその上演される空間でのリハーサルを長く行い、少しでも長く上演してもらえる工夫をしている。「演劇計画」ではそれに加えて、俳優の身体、照明、音響、美術など総合芸術としての演劇を司る“演出家”に焦点をあわせている。
ベトナムは、週末・祝日にしか公演を行わない(行えない)し、長く劇場にいたとしても、メンバーの仕事の都合で毎日稽古できるわけではない。ずっと作・演出を別々の人間が担ってきていたが、前回公演から「演出家」を廃し、メンバー全員で共同して演出を行うスタイルに変更した。

 

なかなか引き裂かれる感じだ。
 

仕事と、個人的な活動という違い以外に、ここまで方向性が違っていて、意思の無い男か、二重人格かと思われるかもしれない。「ああ、ベトナムは趣味でやってるから」と誤解されるかもしれない。しかし。

 

共通していることがある。
「プロ」として作品を創ること。「演劇」にしかできない作品を創ること。ベトナムにしかできないオリジナルの作品を創ること。
身内だけではなく、不特定多数の観客からお金を取って作品を見せる以上、「プロ」として作品を創るべきだし、映画や映像や小説に出来ることを単に役者が舞台で演じるだけの作品ではなく「演劇」だからこそ生きる作品、それも、小劇場だから生まれる作品を創るべきだし、なにより他と似たようなことをやっているのでは、わざわざベトナムを観に来ていただいた意味が無い。

 

年に何回か、ベトナムの制作をやって、両極端を往復することで、自分の仕事もベトナムの活動も客観的に見ることができるし、しかし外せない重要な共通点を確認することができる。社会人劇団の中に、一人こんな自由業の男がいるのも、まんざらではない。と思う。のだけど。たぶん。きっと。

 

本日はご来場いただき、ありがとうございます。


ベトナムからの笑い声  丸井重樹
(2004年11月)

PREVIOUS Stage

NEXT Stage

bottom of page