ベトナムからの笑い声 アーカイブ
Laughing Voice form Vietnam Archive
design Shigeki MARUI
Photo(準備中)
第20回公演『サンサンロクビョウシ』
特殊美術に頼らないと言いながら、今回は大道具に大いに頼った公演。
ACT1は激シュール作品にして、超リアル会話劇。ある村の集会所の日常を、突っ込み一切なしで演じ切る。案の定、観客席は「ポカーン」となる。一部では隠れて笑っていたとの噂も。しかし作家自ら「これで笑う人はちょっとおかしい」というぐらい、マニアックな作品となる。
ACT2は、直前までアイデアが出ず、苦し紛れの一人芝居だったが、これまたいつもの通りそういうものに限っておおむね好評。
ACT3はベトナム初のミュージカル。観光地などにある、顔の部分に穴の空いたパネルを大量に用意。そこから顔だけ出して、踊らず、歌う(しかも意味不明な言語の歌詞)、ミュージカル。ある観客からは「ひょっこりひょうたん島のようだ」とも評された。
作家・黒川と、俳優たちがやりたいことと、制作=観客の観たいものが微妙にずれてきたことを痛感した今公演。作品の製作過程で、作家/俳優/制作がどのようにコミュニケーションをとり、どのように修正を重ねていくべきなのか、次回以降考察していく必要がある。
久しぶりのイサン公演で客が戻ってくるかと妄想していた代表兼制作の楽観的希望とは裏腹に、動員はまったく伸びず、ここ数年で最低動員となる。広報についても、本格的にテコ入れの時期が来た。
Data
2006.8.25.(Fri.)ー27.(Sun.) 5ステージ
スペース・イサン(京都)
クレジット
脚本/黒川猛
音楽・指揮/Nov.16
秘書/山本佳世
制作/丸井重樹
舞台監督/丸山朋貴(ニットキャップシアター)
音響/小早川保隆
照明/高原文江
照明操作/村上五月
絵・映像/中川剛
大道具製作/浜村修司
舞台写真/仲川あい
Web予約フォーム/TheaterReservation
出演
黒川猛
徳永勝則
堀江洋一
山方由美
声の出演
信國恵太
丸井重樹
京都芸術センター制作支援事業
料金 1,500円 日時指定割引1,200円
観客動員 約250人
Details
記念すべき第20回公演です。
特に変わったこともなく、いつも通り見たこともない「笑い」に挑戦します。
シュール、不条理、ナンセンス。その度合いが過去最高レベルに。
妄想の暴走。想像力でついてきて下さい。
「村おこし」の舞台はとある村の集会所。
村を再興するための相談をする村民たちの日常を描きます。日常と非日常。事実と妄想。なさそうだけどある、私たちのすぐ身近に転がっている日常と非日常の境目。
ベトナム流、超リアル会話劇。
「文豪!アクタガワリュウノスケ」では、言葉と格闘する作家の姿を描きます。
次々と繰り出される言葉から、新しい言葉と物語を生み出す作家。はたして、どのような変奏曲が生まれるか。
なお、チラシの告知とは完全に異なった内容となっております。あしからずご了承くださいませ。
「オリエンタル歌劇団」は、ベトナム初挑戦となるミュージカル。
独自の手法でオリジナルミュージカルを上演し続けている“オリエンタル歌劇団”。今回の演目「ロンドバルトとポニーテール」は愛の物語。風雲急を告げるある国の姫と、一兵隊の恋物語。ある愛の花が咲かせた二人の愛。誤解、すれ違い、幾多の苦難を乗り越え、二人の愛は実を結ぶのか。全編オリジナル音楽。茶化すつもりでも、パロディのつもりでもなんでもない、真剣勝負のベトナム流ミュージカル。
ACT1 村おこし
どこにでもある山間の村。世間から隔絶され、過疎化と高齢化が進むこの村を興すために、はたして秘策はあるのか。村の集会所に集まった村人たちのリアルな日常。なさそうだけどある、非日常的な日常を描く。ベトナム流シュール・コメディ。
これまでさまざまな「笑い」に挑戦してきた作家・黒川猛が、自分の最大の武器とも言える“ツッコミ”を封印して挑む実験作。けれども描いているのはあくまでも“日常”。これはある意味、これまででもっともリアルな会話劇かもしれない。
ACT2 文豪!アクタガワリュウノスケ
誰でも知っている文豪の頭の中。彼の小説の登場人物たちが、なぜか世相を嘆く。政治、経済、文化、モラル、乱れる世間を嘆く。嘆く先に見えてくるものは、はたして。ベトナム流不条理・コメディ。
芥川龍之介の小説をモチーフにした一人芝居。自殺を遂げる作家の狂気に共鳴する作家・黒川が見る、社会、世界。
ACT3 オリエンタル歌劇団~ミュージカル ロンドバルトとポニーテール~
唯一無二の歌劇団・オリエンタル歌劇団。その演出手法は、他の追随を許さないオリジナリティに溢れる。登場人物13人と二匹。歌あり、踊りなし、四幕物のミュージカル「ロンドバルトとポニーテール」。全編オリジナル音楽で送る、ベトナム流ナンセンス・ミュージカル…コメディ?
ベトナム初のミュージカル。稀有の才能を持つ音楽家・信國のオリジナル音楽と歌をふんだんに取り入れ、ミュージカルを見たことがない作家・黒川がオリジナルのミュージカルに挑戦します。もちろん、普通のミュージカルとは似て非なるものになるはずです。
Producer's note
ベトナムからの笑い声の公演が、今回で20回目を迎えました。
学生時代から始まって、現在劇団員は全員仕事をしながら作品創作にあたっています。「役者で食っていく」ことも、「劇団で食っていく」ことも、現実的ではないと考えた私たちのスタンスです。いわば、二束のわらじを履く決心をしたわけです。ちなみに六人の劇団員のうち、三人は結婚していて、うち二人には子供がいます。いわばもう一足わらじを履くようなものです。
何足わらじを履いても、作品創作は真剣に、手を抜かない。妥協しない。完成度を落とさないことであり、かつ作品のレベルを高めていく。他のわらじを言い訳にしない。これは相当しんどいことです。「役者で食っていく」ことや「劇団で食っていく」ことと同じぐらい、もしかしたらそれ以上にしんどいことかもしれません。ただむやみに、がむしゃらに「面白いものを創るぞ!」と作品を創ってきた学生時代から、年を重ねるごとにその意識は確実に変わり、高まってきました。
そして今後、変わっていかなくてはいけないことがあります。
小難しい言葉で言うと、劇団と作品を“社会化”していくことです。私たちは何のためにこんなわけの分からないことをしているのか。これまでも、なんとなく共有していたことを明確にしていくことが必要になる気がします。何足ものわらじをはいている私たちは特に、こんなにしんどい思いをしてまでどうして「ベトナム」というわらじを履く必要があるのか、改めて考えなければならないと思っています。しかし。
変わってはいけないことは、「やりたいからやる」という気持ちだとも思っています。
いわば“表現の根本”。これは変わるべきではないし、その気持ちは常に新鮮に溢れ出していないといけない。そうでなくなった時は潔く創作をやめねばならないのだろうと思います。作品に対する姿勢や、劇団や作品の“社会化”は、それがないと成り立たないけれども、この「やりたいからやる」を補完し、今日観に来ていただいているお客様との回路をつなぐためのものなのだと思います。
本日はご来場いただきましてありがとうございます。
最後までごゆっくりお楽しみください。
ベトナムからの笑い声 丸井重樹
(2006年8月)
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