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design Shigeki MARUI

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第21回公演『ストロングボーズ』

シュールでマニアックな前回公演の反省を生かし、また「この作品が終わったら長編を書く!」という作家の個人的な意図により、これまでのオムニバス公演の集大成と銘打った第21回公演。
これまでの「笑い」の要素を一つの話に入れ込むことを目的にした「ゴレンジャー」は、結果的に“分かりやすいベトナム”を現す一本に。そして、集大成ということから発想された、「ドーピング」では、「それは反則だろう」という飛び道具を投入。二度と出来ないだろう作品となる。

Data

2007.1.26.(Fri.)ー28.(Sun.) 5ステージ
スペース・イサン(京都)

クレジット

脚本/黒川猛

音楽/Nov.16 

秘書/山本佳世

制作/丸井重樹 

舞台監督/浜村修司(GEKKEN staff room)
音響/小早川保隆 
照明/高原文江

絵・映像/中川剛
舞台写真/仲川あい

Web予約フォーム/TheaterReservation

出演

黒川和義(黒川・父)

黒川猛 

徳永勝則

堀江洋一

松浦武男(スペース・イサン)

松村康右(フリー)

山方由美

通りすがり

信國恵太

丸井重樹

浜村修司

京都芸術センター制作支援事業

料金  1,500円  日時指定割引1,200円  ペアチケット2,000円

観客動員  約350人

Details

今回は、オムニバス公演の集大成。
これまでに試してきた「笑い」(中・短編)、38作品。
繰り返しによる「笑い」、「笑えない笑い」を笑う試み、テンポとリズムの「笑い」、映像とのコラボレーション、日常を越えた日常=シュールな「笑い」、“言葉”からの妄想、狂気とバイオレンス、劇画調のナンセンスな「笑い」…。
今回の3作品を合わせて41作品。これでいったん、実験は終了としたいと思います。次の展開に、乞うご期待。

ACT1「プラスワンジョーカー」は、“作家・黒川”の妄想シリーズ第三弾。
あるテーマに沿って筆を進める作家。話が核心に迫るその時、現れる“ジョーカー”。彼は果たして、何をもたらしてくれるのか。

ACT2「…ゴレンヂャー」の舞台は、人知れず悪と闘う秘密機関事務所。
彼ら五人は公務員。来るべき悪との戦いに備えて、訓練(シミュレーション)の日々。しかし彼らは公務員。各々の生活を抱え、見えざる敵との戦いも、そろそろ限界を迎えていた。
これまでの「笑い」の要素のいくつかを一つの作品に融合する試み。

ACT3「ドーピング」は、劇団初、脚本家・黒川以外の戯曲を上演。
舞台は病院。危篤状態の父を看病する妹。姿を見せない兄。ようやく駆けつけた兄を責める妹。しかし兄にはある秘密があった。そして…。
今回出演の松村康右が執筆した戯曲を、まず普通に上演。その後、台詞を一切変えずにもう一度上演。笑う要素のまったくない戯曲を「笑い」に転換します。「ドーピング」と称して、何が注入されるのか…。

ACT1 プラスワンジョーカー

「官能小説を書き続ける男」(第17回公演)、「アクタガワリュウノスケ」(第20回公演)に続く“作家・黒川”の短編一人芝居シリーズ。ある緊迫した状況を書き綴る作家。事態はクライマックス、奇跡は起こるかというその瞬間現れるジョーカー。果たしてその結末は?奇跡なんてまず起こらないし、感動的な結末もまず起こらない。世の中に数多ある「よく出来た話」に対抗し、日常のしょうもなさと面白さを描く。

ACT2 本当に存在した!! 実録!! 政府公認秘密機関ゴレンヂャー~見えざる敵との12年

素性を隠して悪と闘う五人の男女。人知れず活動を続ける彼らの苦悩を描く。倒すべき悪とは何か。憎むべき敵とは何か。守るべき国家とは何か。これまでの「笑い」のスタイルを一つの作品に融合する試み。いわばこれまでの実験の集大成。それは来るべき長編作品への実験…か?
ハイスピードのテンポでみせる「笑い」、日常のぬるい間でみせる「笑い」、日常を越えたシュールな日常の「笑い」、感情過多で大仰な芝居の「笑い」。これまでに一つ一つのオムニバス作品で試してきた様々な「笑い」の要素を、一つの作品の中に入れ込めないか。それはそれで一つの実験だが、これは次回(第22回)公演で予定している長編作品のための実験でもある。2002年2月の第13回公演から5年。もはや「笑い」のスタイルは出尽くした。さらに言えば、現メンバーでやれることは大体分かった。2007年8月、ベトナムは第4期へ。劇団史上初めて役者を募集し、新人を育成。そしてふたたび長編作品の製作へと移行する…予定です。

ACT3 ドーピング

ある家族の物語。余命わずかな父親を前に、遅すぎた家族の絆…。脚本家・黒川以外によるシリアスな短い台本を普通(?)に演じた後、台詞を一言一句変えずに笑いに転換する。笑う要素などなかったはずの脚本を、いかに「笑う」か。実験もここまで来ると無謀?
原作が他の役者だったり、役者の即興だったことはあるが、黒川猛以外の作家の脚本を上演するのは劇団初。しかしそこはベトナム流。書くのは今回出演している役者の松村康右。彼の書いた短い脚本を、まずオーソドックスに演じ、まったく同じ脚本を台詞を一切変えずに「笑い」に転換して演じなおす。過去にもチャレンジしたことのある「笑えない笑いを笑う」だが、今回は単純なだけに非常にハードルが高い。

---Key Words

■ゴレンジャー
1975年(昭和50年)4月5日から1977年(昭和52年)3月26日までNETテレビ(現:テレビ朝日)系列で毎週土曜日19:30-20:00に全84話が放送された、東映製作の特撮テレビドラマシリーズ「スーパー戦隊シリーズ」最初の作品である。この後「ジャッカー電撃隊」「バトルフィーバーJ」と続く。現在は「轟轟戦隊ボウケンジャー」で第30作目。「笑い」をテーマにすえる劇団のネタとして、いつかはやる定番といっていい。過去に、「ドリフターズ」「仮面ライダー」はやってきた。ついに「ゴレンジャー」である。


■林家木久蔵
日本テレビの人気演芸番組「笑点」の大喜利メンバー。黄色の着物がトレードマーク。あの大喜利のメンバーも、ゴレンジャーのように色分けされており、キャラクターもはっきりと分かれている。木久蔵のキャラはダジャレ。黄色だけど、カレー好きではなく、ラーメン好き。


■大仰な芝居の「笑い」
代表作は第18回公演「ニセキョセンブーム」のACT3「クローンズ」。いびつなビジュアルに注目が集まったが、芝居的にはいかにオーバーに“芝居芝居”するか、そのオーバーな演技を笑うことに挑戦した。このタイプの最初は第14回公演「ゴッドバザー」のACT4「アントニオ009」。この話も脚本中に「アントニオ」という単語が出るたびに前を向くというビジュアル的な演出に隠れてはいたが、いかに劇画チックに芝居をするかが試された。最近では、前回公演「サンサンロクビョウシ」のACT3「オリエンタル歌劇団」がそのスタイルの芝居だった。
 

■オムニバスによる「笑い」の実験
第13回公演からずっとオムニバス公演をやってきた。その数32本。旗揚げ公演と、第9回公演もあわせると、38本の中・短編を上演。まあその中には、ラジオドラマとか、宮崎宏康による一発ネタなども含まれる。
 

■「官能小説を書き続ける男?」「アクタガワリュウノスケ」
第17回公演「643ダブルプレー」のACT4として上演。この公演は、黒川と堀江の二人芝居と黒川の一人芝居のみで構成された。「官能小説を書き続ける男?」は、ギリギリまで戯曲が出来ず、本人を含めてやきもきした。また前回公演のACT2として上演された「アクタガワリュウノスケ」も、もともと考えていた構想を元にチラシに掲載した文章通りにはいかず、やはりギリギリまで戯曲が出来ず。このシリーズは、ギリギリまでアイデアが出るのを待つ楽しみも含めて作品化される。

■「笑えない笑いを笑う」
このスタイルは、第17回公演「643ダブルプレー」のACT3「元チャンネル団地」でチャレンジ。必死に面白いことをやろうとして面白くない二人を笑えるのかという試みだった。続く第18回公演「ニセキョセンブーム」のACT3「クローンズ」も、ある意味笑えない笑いを笑うのスタイルか。死にかけて必死で生き残ろうとするクローンを見て笑えるか。そして第19回公演「ブツダンサギ」のACT3「ずっこけ三人組」。小学生時代に人生のピークを迎えた中年三人の転落振りを笑えるか。…こうしてみると、最近ずっとこのチャンレジはやってるな。

 

■ドーピング
なぜタイトルがドーピングなのか。まったく笑う要素のない脚本を笑いに転換するのに、普通にやっていては無理。筋肉増強剤、気管支拡張剤、あるいは麻薬並みのドーピングが必要…。はたして、どんな麻薬が投入されるのか。

 

■松村康右
京都教育大学の演劇部「劇団ひなたぼっこ」のメンバーだった男。堀江の同期。松村が堀江を誘って演劇部に入ってきた。大学を卒業して、大阪で就職し、演劇からは遠ざかっていたかと思いきや、大阪で劇団に入っていた。今回「今後のためにも、一回お前脚本書けや」との黒川の一言がきっかけで脚本を書くことに。

Producer's note

「現状維持は後退である」とは、僕の座右の銘ですが、むしろベトナムの方に当てはまる言葉のような気がします。

 

旗揚げ公演はともかく、第9回公演、そして第13回公演以降ずっと、オムニバス公演を続けてきました。それは、一つの「笑い」のパターンに留まるのではなく、さまざまな「笑い」に挑戦するためでした。毎回が実験です。もちろん、実験とはいえ作品として観ていただくための試行錯誤の連続です。

 

止まったら死んでしまう小動物か、自分たちの歳を考えて焦っているのか。前に進んでいるかどうかは定かではない(というか、何が“前”なのかも分からない)けれども、とにかく前進し続けてきました。劇団としてのオリジナリティを保ちながら、スタイルを固定しない。

 

…単に飽き性なだけなのかもしれませんが。

 

1996年10月に旗揚げして10年。11年目を迎えたベトナムは、本公演で一つの区切りを迎えようとしています。黒川と丸井だけが劇団員だった第一期。劇団員を固定して活動を開始した第二期。メンバーが社会人になり、オムニバス公演に移行した第三期。そして、第四期へ。「現状維持は後退である」。ベトナムはまた新境地へ。

 

本日はご来場いただきましてありがとうございます。
最後までごゆっくりお楽しみください。

ベトナムからの笑い声  丸井重樹
(2007年1月)

 

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