第22回公演『洋一の牙』
ポスト・パフォーマンス・トーク(3/4)
黒川猛(THE GO AND MO’S)×岩崎正裕(劇団●太陽族)
2016年4月16日(土)終演後、津・あけぼの座
評論家に嫌われる?
黒川 僕今回の作品で一番考えたのは“ほねっこ” (※7)です。あそこを何にするかはむちゃくちゃ考えた。…すごい考えてるんですよ、あれ、“ほねっこ”。実は。ものすごい考えました。“ほねっこ”。で、あれです。
岩崎 評論とかってさ、あんまり取り上げられたことないよね。
黒川 全く無いですね。
岩崎 不可能だもんね。
黒川 全く無いですけど、昔、ある人にけちょんけちょんに言われましたね。
岩崎 どんなふうな切り口だったの。
黒川 いや、幼稚だって。
岩崎 ああ。
黒川 稚拙だって。幼稚稚拙のオンパレードでした。あの時は僕も若かったんで頭来てね。
岩崎 そうだよね。
黒川 次の公演で、その評論家と一字違いの名前のむっちゃ嫌な役作って、そいつをボッコボコにするっていうことが、昔ありました。昔ですよ。
岩崎 だってさ、評論って、幼稚稚拙っていったら、なんでもそれで片付けられちゃうもんね。
黒川 言われましたね。幼稚だ稚拙だって。
岩崎 評論家は読み解けないものが嫌いなんだよね。
黒川 結構単純ですけどね。パターンとかそういうのは結構。
岩崎 でも、“ほねっこ”に<意味>を見いだせないわけよ。
黒川 はあ…。
岩崎 『8代目スケバン刑事』のやつも、最後けん玉に戻るっていうのは、一応セオリーだよね。そういうのは好きなんだよね。シュールにシュールにいくと、評論家に評論されちゃうから嫌なんだ。きっとね。
黒川 まず評論家さんが観に来ないですけどね。
岩崎 で、話はあっちこっち戻るんですけど、『セルフィッシュボンド』で、黒川くんが書いたのが潜水艦のシチュエーションで、実は、太平洋戦争末期に日本はすごい潜水艦を作ってて、そこに芸人とかどうしようもない人ばっかり乗り込んでて、日本を脱出しようとするっていう。その時に、森本と初めて一緒にやってるわけですよ。で、何が馬が合ったのか、ちょくちょく呼んでいただくんですよね。
黒川 うーん、抜群に面白いと僕は思ってるんですけどね。普通、<飛ぶ>だけであんなに受けないですね(※8)。
岩崎 ああ、そうか。
黒川 すごいことだと思いますよ。飛ぶだけ、ですから。僕が飛んでも全然面白くないですけど。飛ぶだけですからね。
岩崎 森本さんが飛べば面白い、という想定がある。
黒川 ありますね。で、あの人上手なのは、ちょっと後のほうが高く飛ぶんです。あのあたりはすごいですね。ちょっと高い。
岩崎 それは何、稽古場で、黒川くんが演出なわけでしょ。
黒川 一応演出なんですけど、僕ただ、見て笑ってるだけです。皆さん自分で考えて、やられてますね。
岩崎 もちろん指示も出すけど、そこ(稽古場)で起こることで作られていく部分もあるにはあるんですね。
黒川 あるにはありますね。台本は一応最後まで全部書きます。台本いじられることはそんなに嫌じゃないんで。面白かったら、面白い方には行きますね。
※7 ほねっこ…『8代目スケバン刑事』で登場した小道具。言わずと知れた犬の餌。とてつもなく臭い。
※8 <飛ぶ>だけで…『喜劇王 犬養チョップ』で魅せる森本氏の演技。最新作である第23回公演で再再演するが、何度見ても笑える。ちなみに『セルフィッシュボンド』では、落語家“笑犬亭犬平”役だった。